今週のニュースレターでは、ノードが現在のブロックテンプレートを共有する提案の最新情報と、 コベナンツが不要なVaultの構成をまとめた論文を掲載しています。 また、新しいリリースとリリース候補の発表や、人気のあるBitcoinインフラストラクチャソフトウェアの注目すべき更新など、 恒例のセクションも含まれています。

ニュース

  • ブロックテンプレートの共有に関する議論の続き: フルノードピアがコンパクトブロックリレーエンコーディングを用いて 次ブロックの現在のテンプレートを定期的に相互に送信する提案(ニュースレター #366および#368参照)について、議論が続いています。 プライバシーとノードのフィンガープリンティングに関する懸念が寄せられたため、 著者はこれらの懸念に対処し文書を改善するため、現在のドラフトをBINANA( Bitcoin Inquisition Numbers and Names Authority)リポジトリに移管することを決定しました。 このドラフトには、BIN-2025-0002というコードが付与されました。

  • セキュアBitcoin署名レイヤー B-SSL: Francesco Madonnaは、 TaprootOP_CHECKSEQUENCEVERIFYおよびOP_CHECKLOCKTIMEVERIFYを用いた コベナンツが不要なVaultモデルというコンセプトをDelving Bitcoinに投稿しました。 投稿の中で彼は、既存のBitcoinのプリミティブを使用していると述べており、 ほとんどのVaultの提案ではソフトフォークが必要となるため、これは重要なポイントです。

    設計上、3つの異なる使用パスがあります:

    1. 通常動作のための高速パスで、オプションのCS(コンビニエンスサービス)が選択された遅延を強制できる

    2. カストディアンBによる1年間のフォールバック

    3. 失踪や相続が発生した場合の3年間のカストディアンパス

    A、A₁、B、B₁、C、CSの6つの異なる鍵があり、B₁とCはカストディアンの管理下に置かれ、 リカバリーパスと同時にのみ使用されます。

    この設定は、ユーザーが資金をロックアップでき、資金を託したカストディアンが資金を窃盗しないという確証できる環境を作ります。 これはコベナンツのように資金の移動先を制限するものではありませんが、 カストディアンを使用した自己管理において、より強固なスキームを提供します。 投稿の中で、Francescoは、誰かがこのアイディアを実装しようとする前に、 読者にホワイトペーパーをレビューし議論するよう呼びかけています。

リリースとリリース候補

人気のBitcoinインフラストラクチャプロジェクトの新しいリリースとリリース候補。 新しいリリースにアップグレードしたり、リリース候補のテストを支援することを検討してください。

  • Bitcoin Core 30.0は、ネットワークの主要なフルノードの最新バージョンのリリースです。 リリースノートには、以下のような重要な改善点が記載されています: 標準トランザクションにおけるレガシーsigopsの上限を2500に設定、 複数のデータキャリア(OP_RETURN)アウトプットが標準になったこと、 datacarriersizeのデフォルト値が100,000に増加、 デフォルト最小リレー手数料率と 増分リレー手数料率が0.1sat/vbに、トランザクションオーファネージのDDoS保護の改善、新しいbitcoinCLIツール、 Stratum v2との統合のための実験的なプロセス間通信(IPC)マイニングインターフェース、 coinstatsindexの新しい実装、natpmpオプションがデフォルトになったこと、 ディスクリプターウォレットへの移行によるレガシーウォレットのサポートの削除、 TRUCトランザクションの使用と作成のサポート、その他多数の改善が含まれています。

  • Bitcoin Core 29.2は、P2P、mempool、RPC、CI、ドキュメント、 その他の問題に対するいくつかのバグ修正を含むマイナーリリースです。 詳細はリリースノートをご覧ください。

  • LDK 0.1.6は、LN対応アプリケーションを構築するための、この人気のライブラリのリリースです。 DDoSおよび資金の盗難に関連するセキュリティ脆弱性パッチ、パフォーマンスの改善およびいくつかのバグ修正が含まれています。

注目すべきコードとドキュメントの変更

最近のBitcoin CoreCore LightningEclairLDKLNDlibsecp256k1Hardware Wallet Interface (HWI)Rust BitcoinBTCPay ServerBDKBitcoin Improvement Proposals(BIP)Lightning BOLTsBitcoin InquisitionおよびBINANAsの注目すべき変更点。

  • Eclair #3184は、BOLT2で規定されているように、 切断前にshutdownメッセージが送信済みの場合のみ、再接続時にshutdownを再送信することで、 協調的な閉鎖のフローを改善します。Simple Taproot Channelの場合、Eclairは再送信用に新しいclosing nonceを生成して保存し、 ノードが後で有効なclosing_sigを生成できるようにします。

  • Core Lightning #8597は、CLNがsendonionまたはinjectpaymentonionを介して 不正なオニオンメッセージを送信した後、 直接ピアがfailmsg応答を返した際に発生するクラッシュを防止します。 現在、CLNはこれを単純な最初のホップの失敗として扱い、クラッシュするのではなくクリーンなエラーを返します。 これまでは、これをさらに下流から来た暗号化されたfailonionとして扱っていました。

  • LDK #4117は、static_remote_keyを使用したremote_keyのオプトインの決定論的導出を導入します。 これにより、ユーザーはバックアップシードフレーズのみを使って、強制クローズの際に資金をリカバリーできます。 これまでは、remote_keyはチャネルごとのランダム性に依存しており、 資金をリカバリーするには、チャネルの状態が必要でした。この新しいスキームは、 新しいチャネルではオプトインですが、既存のチャネルをスプライシングする際は自動的に適用されます。

  • LDK #4077は、SplicePendingイベントおよびSpliceFailedイベントを追加します。 前者はスプライスファンディングトランザクションが交渉され、 ブロードキャストされ、両サイドでロックされた時点(RBFの場合を除く)で発行されます。 後者のイベントは、interactive-txの失敗、tx_abortメッセージ、チャネルシャットダウンまたは 静止状態での切断/再読込により、 ロック前にスプライシングが中止された際に発行されます。

  • LDK #4154は、プリイメージのオンチェーン監視処理を更新し、 取得プリイメージとペイメントハッシュが一致するHTLCに対してのみ クレームトランザクションが作成されるようにします。これまでは、 LDKは請求可能なすべてのHTLC(期限切れのものと既知のプリイメージを持つもの)を請求しようとしていましたが、 これは無効なクレームトランザクションを作成するリスクがあり、 相手が別のHTLCを先にタイムアウトさせた場合、資金損失の可能性がありました。

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