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Bitcoin Optech Newsletter #234
今週のニュースレターでは、新しいVault専用のopcodeの提案に加えて、 クライアントやサービスの興味深いアップデートや、新しいリリースとリリース候補の発表、 人気のあるBitcoinインフラストラクチャソフトウェアの注目すべき変更など、 恒例のセクションを掲載しています。
ニュース
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● 新しいVault専用opcodeの提案: James O’Beirneは、 Bitcoin-Devメーリングリストに、
OP_VAULT
とOP_UNVAULT
という 新しい2つのopcodeを追加するソフトフォークの提案を投稿しました。-
OP_VAULT
は、信頼性の高い支払いパスへのコミットメント、 遅延期間、信頼性の低い支払いパスへのコミットメントの、3つのパラメーターを受け入れます。 -
OP_UNVAULT
も3つのパラメーターを受け入れます。 O’Beirneが想定しているVaultでは、3つのパラメーターは、 同じ信頼性の高い支払いパスへのコミットメントと、同じ遅延期間、 後のトランザクションに含める1つ以上のアウトプットへのコミットメントになります。
Vault(金庫)を作成するために、アリスは信頼性の高い支払いパスを選択します。 これは、たとえば複数の署名デバイスや別々の場所に保管されているコールドウォレットへのアクセスを要求するマルチシグのような支払いパスです。 また、彼女のホットウォレットから単一の署名で使用可能な信頼性の低い支払いパスも選択します。 最後に、BIP68と同じデータ型で遅延時間を選択します。数分から1年までの時間を指定できます。 パラメーターを選択したら、自分のVaultに資金を受け取るための通常のBitcoinアドレスを作成します。 このアドレスは、
OP_VAULT
を使用したスクリプトにコミットしています。自分のVaultアドレスで受け取った資金を使用する場合、アリスはまず最終的に支払いをするアウトプットを決めます( たとえば、ボブに支払いをし、お釣りがあれば自分のVaultに戻すなど)。通常の使用法では、 アリスは、信頼性の低い支払いパスの条件を満たし(ホットウォレットから署名を提供するなど)、 保管されたすべての資金を1つのアウトプットに支払うトランザクションを作成します。 このアウトプットには、信頼性の高い支払いパスと遅延の同じパラメーターを持つ
OP_UNVAULT
が含まれています。 3つめのパラメーターは、アリスが最終的に支払いたいアウトプットへのコミットメントです。 アリスは、トランザクションの構築を完了させます。これには、 手数料スポンサーシップや、アンカー・アウトプットタイプ、 その他の仕組みを使用した手数料の添付も含まれます。アリスは、トランザクションをブロードキャストし、その後ブロックに格納されます。 これにより、誰もが保管の解除の試みが進行中であることを観察することができます。 アリスのソフトウェアは、これが自分の保管された資金であることを検出し、 承認されたトランザクションの
OP_UNVAULT
アウトプットの3つめのパラメーターが、 アリスが以前作成したコミットメントと正確に一致するか検証します。 一致した場合、アリスはここで遅延期間が終わるのを待ち、その後、OP_UNVAULT
のUTXOを彼女が以前コミットしたアウトプット(たとえば、ボブとお釣り用のアウトプット)へ 支払うトランザクションをブロードキャストすることができます。 これは、アリスの資金を、彼女の信頼性の低い支払いパス(ホットウォレットのみを使うような)を使って 支払いに成功したことになります。しかし、アリスのソフトウェアが承認された保管解除の試みを確認して、それが自身によるものではないと認識した場合、 アリスのソフトウェアは、遅延期間中に資金を凍結する機会を得ます。ソフトウェアは、
OP_UNVAULT
アウトプットを以前のコミットメントの対象である信頼性の高いアドレスに支払うトランザクションを作成します。 遅延期間が終わる前にこの凍結トランザクションが承認される限り、 アリスの資金は信頼性の低い支払いパスによる侵害から保護されます。資金がアリスの信頼性の高い支払いパスに転送された後、 アリスはそのパスの条件を満たして(たとえば、コールドウォレットを使用して)、 いつでも資金を使用できます。OP_VAULT
の提案の利点として、以下の点が挙げられています:-
● witnessがより小さく: 提案中のOP_CHECKSIGFROMSTACKを使用するような 柔軟なCovenantは、保管を解除するトランザクションのwitnessに、 トランザクション内の他の場所に含まれる大量のデータのコピーを含める必要があり、 トランザクションサイズと手数料のコストが肥大化します。
OP_VAULT
では、 オンチェーンに含まれるスクリプトとwitnessがとても少なくなります。 -
● 支払いのステップが少ない: 現在利用可能な事前署名トランザクションに基づく柔軟性の低いCovenantの提案は、 最終的な宛先に送信する前に所定のアドレスに資金を引き出す必要があります。 このような提案では、通常、受け取ったアウトプットを 他の受け取ったアウトプットとは別のトランザクションで使用する必要があり、 支払いのバッチ処理をすることができません。 これにより、関連するトランザクションの数が増え、支払いのサイズとコストも膨れ上がります。
OP_VAULT
は、通常、単一のアウトプットを使用する場合に必要なトランザクション数が少なく、 複数のアウトプットを使用または凍結する際のバッチ処理もサポートします。 これにより大量のスペースが節約される可能性があり、安全のためにアウトプットを統合する必要が生じる前に、 Vaultが多くのトランザクションを受け取れるようにすることができます。
このアイディアの関する議論において、Greg Sandersは、 (O’Beirneが要約したように)少し異なる構成を提案しました。 「VaultのライフサイクルにおけるすべてのアウトプットをP2TRにすることができ、 たとえば、Vaultの操作を隠すことができます。これは非常に優れた機能です。」
これとは別に、Anthony Townsは、この提案により、Vaultのユーザーは、 信頼性の高い支払いパスのアドレスに資金を送信するだけで、いつでも資金を凍結でき、 ユーザーは後で資金の凍結を解除できるようになると指摘しています。 これは、盗難の試みを阻止するために、コールドウォレットのような特別に保護された鍵にアクセスする必要がないため、 Vaultのオーナーにとってメリットがあります。しかし、アドレスを知った第三者も、 ユーザーの資金を凍結することができ(そのためにはトランザクション手数料を支払う必要がありますが)、 ユーザーにとって不都合が生じます。多くの軽量ウォレットが、オンチェーントランザクションを特定するために、 第三者にアドレスを開示してることを考えると、そのようなウォレット上に構築されたVaultは、 意図せず第三者にVaultユーザーに迷惑をかける能力を与えてしまう可能性があります。 Townsは、凍結条件の代替案として、凍結を開始するため非秘密情報を追加で提供するよう要求し、 この方式の利点を維持しつつ、ウォレットが不必要に第三者に資金の凍結能力を与えて ユーザーに不都合を生じさせるリスクを低減することを提案しています。 Townsはまた、バッチ処理をサポートする可能性を示唆し、Taprootのサポートを検討しています。
いくつかの返信で、
OP_UNVAULT
は、CTVを直接使用するよりオンチェーンコストは高くなるものの OP_CHECKTEMPLATEVERIFY (CTV)提案の機能の多くを提供することができると述べています (ニュースレター #185で以前説明したDLCの利点も含む)。この記事の執筆時点では、議論はまだ活発でした。
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サービスとクライアントソフトウェアの変更
この毎月の特集では、Bitcoinのウォレットやサービスの興味深いアップデートを取り上げています。
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● KrakenがTaprootアドレスへの送信を発表: 最近のブログ記事で、Krakenはbech32mアドレスへの引き出し(送信)をサポートすることを発表しました。
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● Whirlpoolがcoinjoin Rustクライアントライブラリを発表: Samourai Whirlpool Clientは、 Whirlpool coinjoinプラットフォームと対話するためのRustライブラリです。
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● Ledgerがminiscriptをサポート: Ledgerのハードウェア署名デバイス用のBitcoin firmware v2.1.0リリースは、 以前発表したようにminiscriptをサポートしています。
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● Lianaウォレットのリリース: Lianaウォレットの最初のバージョンが発表されました。 このウォレットは、タイムロックされたリカバリーキーを持つシングルシグのウォレットをサポートしています。 将来的には、Taprootやマルチシグウォレット、時間減衰型のマルチシグ機能を実装する予定です。
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● Electrum 4.3.3リリース: Electrum 4.3.3では、Lightning、PSBT、 ハードウェアウォレットのサポートおよびビルドシステムの改良が含まれてます。
リリースとリリース候補
人気のBitcoinインフラストラクチャプロジェクトの新しいリリースとリリース候補。 新しいリリースにアップグレードしたり、リリース候補のテストを支援することを検討してください。
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注目すべきコードとドキュメントの変更
*今週のBitcoin Core、Core Lightning、Eclair、LDK、 LND、libsecp256k1、Hardware Wallet Interface (HWI)、Rust Bitcoin、BTCPay Server、BDK、Bitcoin Improvement Proposals(BIP)、およびLightning BOLTsの注目すべき変更点。
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● Core Lightning #5751は、P2SHでラップされたSegwitアドレスの新規作成のサポートを非推奨にしました。
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● BIPs #1378は、v2暗号化P2Pトランスポートプロトコル用の BIP324を追加しました。